vol.1 野生の鮭を原産地で釣ること

2023年05月01日

vol.1は、初めての海外釣り旅1988年から「世界を釣ろう」立上げの2014年までの総括レポートです。


           *キングサーモン 雄110cm・30lb 1997年 アラスカ・レイククリーク( レイククリークは、川の名前です )


2015年09月23日 10:20

" 野生の鮭を原産地で釣ること "

それは、地球の大自然と野生の生命の素晴らしさを全身で感じること。

いくつもの旅を重ねることで、しみじみとその思いは強くなる。

( ただし、海外釣り旅に行き始めた当初から、それを明確に意識していたわけでは

ありません。正直に言えば、最初はただただ大きい魚が釣りたかった・笑 )



    * 太平洋鮭7種と大西洋鮭1種を釣るという目標を2014年ノルウェーで達成。写真はアトランティックサーモン、ノルウェーにて


関東を中心に国内でトラウトルアーフィッシングを始めて数年経過した頃( 1980年代後半)。

それなりに魚も釣れるようになってはきたが、釣り場に対して多い釣り人。

湖での釣りでは遊覧船などの釣り以外のレジャーと共存せざるを得ない環境。

そして、何より、淡水のトラウトでは釣りの対象となる魚はほぼ放流魚に頼っているという状況。

野生の魚( あるいは、野生化した魚 )を釣るには恵まれているとはとても言い難いのが現実だ。

釣りを楽しんでいる一方で、ふつふつとストレスが溜まっていった。


そもそも、俺は何で釣りをしたいと思ったのだろうか。そう自問している中で、開高健さんの

「 オーパ、オーパ !! 」、「 フィッシュ・オン 」などの書籍や数々のTVドキュメンタリー番組や

「 河は眠らない( ビデオ )」などで語られるアラスカを始めとした雄大な大自然に身を投じて

体験する豪快な釣りの世界。そんな釣りを自分もいつかはチャレンジしたいと胸が苦しくなるほど

の憧れを抱いていたことに今さらながら " 気づいてしまった! "。


もういてもたってもいられない!即座に行動を開始。今でも忘れない、1988年の年明けの頃のこと。

釣り専門雑誌の過去記事を調べたり、海外釣り旅専門の旅行社(当時既に都内に数件存在していた)

を訪ねたりと情報収集に奔走。

そして " 気づいてしまった " 同年の1988年夏、降海型のニジマス、スティールヘッドをターゲットに

決めて初めて釣りのために海を渡った。カナダはブリティッシュ・コロンビア州のスキーナ水系の

キスピオックスリバー、バークレーリバーへ。

結果は・・・30~40cmクラスのイワナやニジマスしか釣れず、正直がっくり。


ただ、その大自然の風景と野生魚の美しさには心底感動し、またチャレンジしようという思いのほう

が勝っていた。その翌年の1989年には、アラスカにレッドサーモンを釣るために再び海外へ。

が、しかし・・・続きは、以下の今までの主に思い出に残った旅のレポートをご覧ください !


*鮭について

サケ科に属する魚は、広義ではすべて鮭と言えるのだと思いますが、サケ属・サルモ属に

属する代表的な鮭と言われている下記の8種を原産地で釣ることを自分なりに一つのGOALと

決めて旅を続けてきました。


●サケ属( タイヘイヨウサケ属 )

ベニザケ( レッドサーモン )1989、2013アラスカ

ギンザケ( シルバーサーモン )1990、1999アラスカ

カラフトマス( ピンクサーモン )1990アラスカ、2010カムチャッカ

マスノスケ( キングサーモン )1997アラスカ

シロサケ( チャムサーモン )2010カムチャッカ

サクラマス( チェリーサーモン:ヤマメの降海型 )2002シベリア

スティールヘッド( ニジマスの降海型 )2004カナダ


●サルモ属 ( タイセイヨウサケ属 )

タイセイヨウサケ( アトランティックサーモン )2014ノルウェー


一般的に、サケ科は上記の2つの属とイトウ属、イワナ属の4属がよく知られていますが、

サケ科魚類の分類や種の数については、未だに世界の研究者において統一の見解には至っていない

そうです。4属に加えて、コクチマス属など全部で11~12属とされたり、その種類も控えめで

66種とする説から180種あるとする説まであり、混沌としているようです。


【 レッドサーモンの憂鬱 】

海外は2回目となる1989年にアラスカへレッドサーモンを狙って訪れた。

アンカレッジから水上セスナで北西へ約30分。ジャドレイクという湖があり、そこの湖畔に立つ

ロッジに滞在しての釣りだった。釣りのポイントとしては、湖に流れ込む川に立ち込んで

遡上する魚を狙うか、湖の流れ込みの周辺で遡上のために集まる魚を狙うかのどちらか。



     * アンカレッジから飛び立った水上セスナから見下ろしたアラスカの原野。360度人工物のない圧倒的な大自然 1989



                       * 水上セスナから見たアラスカのジャドレイク 1989


期待に胸を膨らませての初アラスカ、初サーモンのチャレンジだったのだが・・・

数えきれないほどのキャスティングを繰り返したが、ほとんどレッドサーモンはルアーに反応しない。

せいぜいルアーに対して邪魔なものを払うかのような動きしかしないのだ。

釣り3日目最終日にやっと1尾のレッドサーンをかろうじてキャッチできただけという何とも厳しい結果。

釣果としては、レッドサーモン以外では、ドリーバーデン( 降海型のオショロコマ )が数尾。本当に、トホホって感じだった。



                     * 唯一の釣果、レッドサーモン。アラスカ、ジャドレイクにて 1989


ここで当然湧く疑問は、「 ルアーにほとんど反応しないのはレッドサーモン全般の特徴なのか? 」

ということだ。アラスカでは、「 レッドはゲームフィッシングの対象にならないから、やめておけ 」

と言うガイドもいるらしい。やっぱり、そういうことなのか。

ところが、である。1995年のこと。同じくアラスカはイリアムナレイクという湖に注ぐある川では、

レッドサーモンが入れ食いの状態で釣れたのだった。このときの釣りの対象のメインはニジマスで、

たまたまガイドの勧めで半日だけのトライだった。



                  * レッドサーモンは入れ食いで釣れた。アラスカはイリアムナにて 1995


1時間の間、1キャスト1ヒットがずっと続く。贅沢な悩みだが、釣れすぎるのも面白くないもの。

1時間を過ぎたあたりで飽きてしまった。

ルアーにまったくというほど反応しない。一方は異常なほどの反応で入れ食い。場所によって違うのか。

それとも同じ場所でも群れによって違うのか。その疑問は、いまだに不明のままだ。


1989年以降はレッドサーモンをメインターゲットとした釣り旅には一度も出かけていない。

まったくルアーに反応しないか、あるいは1995年のように 釣れ過ぎるかのどちらかだとしたら、

とてもじゃないけど再チャレンジする気になれないから。


【 シルバーサーモンで目覚める 】

やっと満足できる海外釣り旅が実現したのは、海外3回目となる1990年アラスカ。

シルバーサーモンを目指した旅だった。



                     * アラスカ、タラチュリトナリバーの湖畔に建つロッジ 1990


前年のジャドレイクに近いタラチュリトナリバー。初日の最初のポイントで、釣り開始わずか5分。

ガツン!というあたりがあって思いっきり合わせを入れた直後に60cm大のシルバー( 雄 )が

水面を割って跳躍した。ドラグを鳴らして突っ走る。再び飛ぶ。そんなやりとりが続く。

ばらさずに取り込めるのかとハラハラ、ドキドキ。長い長い時の流れを感じた。

そして、やっとの思いで取り込むことができたと感じたのだが、おそらく実際には数分の時間だっただろう。



           * 3日間で20回のヒット、内8尾をキャッチした。写真はその中で最大の雄のシルバーサーモン 1990


やっと、アラスカの原野で野生の鮭を釣るという夢が納得できるかたちで叶えられた瞬間だった。

その後、一番回数多くチャレンジしているサーモンはシルバーサーモンだ。ルアーに反応がいい。

ファイトも素晴らしい。飛ぶ、突っ走る、潜るなど多様かつ、その動きはスピード感溢れるものだ。

サーモンの中でも、ゲームフィッシュとして人気が高いのも頷ける。




上の写真は、1995年のアラスカのイリアムナ。この旅の目的は、ニジマス(詳細は後述)だったが、

シルバーサーモンの遡上がピークとの情報を得て、1日だけ水上セスナに乗ってフライアウト。

カミシャックリバーという川で釣ったもの。

シルバーサーモンのフィッシングでもう一つの思い出深い旅は、アラグナックリバー。

アンカレッジから飛行機で西南へ約1時間のキングサーモン村からさらに水上セスナで約20分。

川岸に建つアラグナックロッジに滞在。



                         * アラスカ、アラグナックリバーの風景 1999


河口に近い下流域での釣りで、海から上りたてのフレッシュなシルバーが釣れることで人気の

釣り場だ。その魚体は眩しいほど美しい。そして、その激しいジャンプは銀色のロケット弾のよう。

以下の写真をご覧いただきたいのだが、同じ下流域のポイントでも銀一色の魚と濃淡の婚姻色が入る

魚が混在するということ。各個体の微妙な色の差は、海から川に入ってからの時間の経過の差に

よるものと思われる。サーモンは一気に川を上がっていくのではなく、休みながら断続的に上がって

いくということだろう。









             * 上の3枚は、同じアラグナックリバーの下流域で釣ったシルバー。婚姻色の違いに注目 1999




上の写真は、カナダのバンクーバー島( 2004 )。このときの狙いはスティールヘッドだったが、

たまたま1尾だけこの1m超&10kg超のシルバーサーモンが釣れた。おそらく、今まで釣った中で

最大のシルバー。皮肉なものだ。


【 キングで不覚の涙 !? 】

いつかは、アラスカでキングをという夢はずっと抱いていたのだが、その遡上のピークはエリアに

よっても違うが6月~7月初旬あたりということで夏休みが取りにくく中々実現しなかった。

初めて、そのチャレンジが実現したのは1997年の6月下旬だった。アンカレッジからセスナで約40分の川、レイククリーク。

海外釣り旅の中でももっとも思い出に残っている旅の一つだ。

それは、キャッチするまでに長い苦悩の道程があったから。



                      * アラスカ、レイククリーク。滞在はマクドーガルロッジ 1997


初日はノーヒット。この年のアラスカは異常気象で日中は30℃を超える猛暑。魚の活性は決してよくなかった。

2日目は、6回のヒットがあったが結果的にはすべてばらしてしまう。

最後の6回目は40lb( 約18kg )クラスで、そのファイトはすさまじかった。よく走る、飛ぶ。

また、じっと動かなくなったりする。そして、とにかく重い。下流に一気に下った際に、

ドラグ機能が追い付かず私も下流に向かって走ったのだが。最後はフックをはずされてしまう。


3日目。ヒットするも相変わらず、バラシの連続。フックがはずれて、ばれてしまうのは掛かりが浅いせいではないか。

ガイドは、「キングの口は硬い。ヒットした瞬間に2回全体重をかけて

あわせろ」という指示通りにしているのだが。それとも私の釣りのスキルの未熟さ故なのか。


そのときにふと、「フックが太過ぎで顎を貫通しにくいのではないか」との思いが浮かぶ。

ガイドから提供された太くごっついフックをずっと使っていたのだが、日本から持参した

がまかつ製のサイズはやや小さいが細くて鋭いフックに自分の判断で交換することにした。

( そのごっついフックは、40lbを超えるような大物に耐えるにはこれくらい頑丈なものが必要というガイドの勧めによって使用していた )





チャンスは、そのフック交換の直後に来た。午後8時。その日としては6回目のヒットだった。

鋭いアタリを感じた直後に思いっきりあわせる。手応えは十分でがっちりと針掛りした。フック交換は正解だったのだ。

たまたま、そのポイントの足場が悪くファイトに苦労したが、必死の攻防の末に無事ランディングに成功。



                * 初のキングは、106cm・27lb( 約12kg )の雌。アラスカ・レイククリーク 1997


アラスカの川で岸からキャスティングで。しかも、スプーン( ルアーの一種 )で釣るという夢は遂に達成された。

ネットに入ったキングを見たときには、全身の震えが止まらなかった。

そして、不覚にも涙があふれてきたのだ。。。



                    * 幸運にも最終日4日目に、110cm・30lb( 13kg強 )の雄をキャッチ


【 最高のゲームフィッシュ、ニジマス 】

ニジマスを故郷、原産地で釣りたい。それもアラスカで釣ってみたい。そんな思いを抱いて情報を

探していたところ、雑誌「アングリング( 当時、廣済堂出版 )」でイリアムナの存在を知った。

東京湾の約2倍というアラスカ最大の湖、イリアムナレイク。そこに注ぐニューヘレンリバーという川

にスティールヘッドのように遡上するシルバーに輝く美しいビッグレインボーがいるという。

そのファイトは、地球上最強のレインボーと言われるほど強く全米アングラーの憧れの的なのだと記事には書かれていた。



              * イリアムナレイクに注ぐニューヘレンリバーの風景。河口近くは川幅数百メートルはある大河だ


1995年8月下旬、イリアムナレイク湖畔のロッジ、L.I.アドベンチャーズを訪ねた。

イリアムナレインボーを目指す4日間の釣り。湖に注ぐニューヘレンリバーの河口近くの

船着き場からエンジンボートに乗り、そこからわずかボートで20分の上流から河口までの範囲を

ボートを流しながらキャスティングで釣っていく。


レッドサーモンの遡上の最盛期を迎えていて、川は赤い点だらけだった。最初は、そのレッドの卵を

ニジマス同様に狙うドリーバーデンやグレーリングばかりが釣れるのだった。釣り始めて約30分、

それまでとは違うひったくるような暴力的なあたりに遭遇。一瞬の緊張の中で、合わせようと思ったその直後。

ボートの十数m先に銀色の魚が跳躍した。それも1m以上真上に。

その60cm大の魚はイリアムナレインボーだとすぐにわかった。


ちゃんと合わせを入れたほうがいいのか、走らせたほうがいいのか。そんな迷いを抱きつつ、

逃がすまいとロッドを煽った瞬間、魚はもう一度激しく飛んだ。

その直後にラインはテンションを失った。フックははずれ、魚はもう姿を消したのだった。


そんな調子で、初日は6尾がヒットしたが、1尾も上げることは叶わなかった。

とにかく、そのめちゃくちゃな暴れっぷりに翻弄され続けた。想像を絶するスピードとパワー。

私の自信を失わせるのに十分すぎるほどの鮮烈なイリアムナレインボーとの出会いだった。



                 * イリアムナレイクの湖畔は、すでに秋を感じさせる風景が広がる 1995・8月下旬


2~3日目は、不運にも天候が悪化して暴風雨のためにニューヘレンリバー及びその周辺のニジマスの

ポイントも釣りが不可能となり、別のエリアにシルバーサーモンを釣りに行くなどして過ごすしかなかった。

最終日の4日目。まだ、天候は完全には回復してはいないものの、この日の午前中で釣りは終了という

日程だったので、ガイドに無理を言ってニューヘレンリバーでの釣りに再チャレンジした。


そこで、奇跡は起きた。釣りを始めて1時間半ほど過ぎた午前10時20分過ぎ。あの暴力的なあたりが来たのだ。

これは、ラストチャンスかもしれない。絶対にばらすまいと思いながら、合わせを入れる

と魚は激しくジャンプして水面が割れた。ここからが、問題なのだ。ばらすか、ばらさないか。


実は、初日の完敗の際に、ガイドに教わった。というか、諭された。「合わせの後には強引に

引っ張るな。走るときは走らせろ。そして止まったらロッドを煽ってラインを巻いて寄せるんだ。

また走り出したら走らせろ・・その繰り返しで、強い魚を疲れさせていくんだ」

( 今は、ドラグを鳴らして走る大物の釣りの基本だと学んだが、当時20年前はその経験が圧倒的に不足していた )


その言葉を頭の中で反芻しながら、冷静にやりとりを続ける。激しくジャンプすると、

つい逃がすまいとロッドを引っ張りたくなる。その気持ちをぐっとこらえて。

魚をボート近くに寄せると、再び大きく完璧な尾鰭を躍動させて走っていく。

それを何度か繰り返して、やっとボートに寄せて取り込んだ。足を震わせながらも、イリアムナレインボーを腕に抱いたのだった。



                 * 初キャッチのイリアムナレインボー。淡水なのに銀化してシルバーに輝く 1995


その30分後に再びヒット。今度は、80cmオーバーの大物で、ファイトは30分を経過しても

決着しないほど激しいものだった。ボートからのランディングを諦めたガイドは、魚をフッキング

したままボートを岸際まで移動。ボートを降りて岸に上がって写真を撮ろうということに。


ここで事件は起きた。その魚は、ガイドがカメラを構えてシャッターをまさに押そうかという

瞬間に、私の腕から最後の力を振り絞って大きく跳躍。川へと戻っていったのだった。

この写真に残せなかった悔しさはトラウマとなって、その後数年間尾を引いた。

今では、そんな悔しさも海外釣り旅の思い出なのだと割り切ることにしている。( 実は今でも悔しい・笑 )


次に印象に残っているニジマスの旅は、2004年カナダのバンクーバー島。

同じくカナダ、初の1988年海外釣り旅のリベンジ。スティールヘッドへの再挑戦だ。



              * カナダ・バンクーバー島のカウチンリバーウィルダネスロッジ。ホテル並みの快適さだ 2004


スキナー水系よりも魚影ははるかに濃く、5日間で10数回のヒット。約70cmを筆頭に5尾を

キャッチ、また一つ夢を達成した。その他にもカットスロートに河川型のニジマス、

キングサーモン、シルバーサーモンと多様な魚種と出会える素晴らしいフィールドだった。



           * スティールヘッドを求めた初の海外釣り旅( 1988カナダ )での空振りを、16年の時を経て雪辱 2004


直近では、2013年のアラスカ南西部。ブリストルベイ周辺のナクネクリバーとその周辺の河川。

狙いは、河川型のニジマス。ニジマスが釣れたのは、ナクネクリバーの湖畔に建つロッジの前から

水上セスナでフライアウトしてたどり着いた湖から徒歩で訪ねた小さな川、コンタクトクリーク。

平均50~60cm大のニジマスは、全身に斑点をまとい、鮮やかなレッドバンドが映える。



                   * ロッジ前の桟橋から飛び立ったセスナから見下ろすアラスカの原野 2013  



            * 水上セスナで小さな湖へ。そこから原野を徒歩で移動、コンタクトクリークに到着する 2013



                      * 河川型のニジマス。アラスカ、コンタクトクリーク 2013


【 サクラマス、シベリアの豊穣 】

2002年6月、シベリアの原野を流れるコッピリバーへ。東京から新潟、新潟からハバロフスク。

ハバロフスクで1泊し、国内線で約1時間半でソビエツカヤ・ガバニ空港へ。そこから、今度は

車で2時間半ほど山中の林道を走り、コッピリバーの船着き場に。そこで迎えのボートに乗って

1時間下流へ移動してやっと滞在するロッジにたどりつく。隣国でありながら丸2日間を要する長旅だ。



                      * 川から見たロッジ。コッピリバーの河口近くに建つ 2002


豊かな水量を誇る川の周囲は広葉樹を中心とした新緑の森林帯。水の色は深い緑色で、

その森から供給される様々な有機的な栄養に満ちている濃厚なスープのようだ。

そして、日本のどこかにもありそうな郷愁をさそう風景が広がる。



            * コッピリバーの風景。周囲は、熊や鹿、そしてシベリアン・タイガーも生息しているとのこと  2002


ロッジ到着の翌日から4日間のフィッシングがスタート。初日の最初のポイントで、3投目に

いきなりヒット。重く、ずっしりとしたあたり。そんなに派手なファイトはしないが力は強い。

ロッドを立ててリールを巻いて岸へ寄せようとするとルアーを口からはずそうとするというよりも、

もといた位置へ繰り返し戻ろうとする動きをする。


何度もラインを引き出したあとに、無事にランディング。約65cmの雄のサクラマス。

驚くべきは、その体高だ。20cmくらいだろうか。体長:体高が、ほぼ3 :1というバランス。

均整のとれたプロポーション。欠けるところは一つもない鰭。シルバーに輝くボディ。完璧である。



                     * 釣り初日、最初のポイントで釣れた雄のサクラマス 2002


ポイントによるばらつきはあるもののスプーンであれ、ミノーであれ、とにかくルアーへの反応はいい。

また、魚影は驚くほど濃く、サクラマスの他にはガリエツ( ドリーバーデン )やアムールイトウ、ヤマメが釣れる。

特にサクラマスは、途中で数を数えるのを止めたというほどに釣れるのだった。



                    * 最大は、71cmで8~9kgはあろうかという豊満な魚体だった 2002


ロッジは、食堂、宿泊棟、サウナから構成され、生活インフラとしては山からの湧水を引いた水道、

電気は自家発電など必要最小限のものは揃っており、なかなか快適だ。



                      * ロッジの中庭。夜は満点の星を仰ぐ 2002


また、供される食事はロシアの家庭料理で、野菜たっぷりのスープにサラダやシチュウなど

どれもおいしいものばかり。ガイドが森で討った鹿肉のハンバーグは絶品だった。

また、コッピリバーの河口近くの海は豊かなカニの漁場とのことで、毎日、茹でたタラバガニが食べ放題。

予期せぬご馳走に笑みがこぼれる。



                     * 川原で焼きタラバ。釣り最終日のランチBBQは豪快そのもの 2002





【 ピンクサーモン、怒濤の遡上 】

3回目のロシア釣行となる、カムチャッカ半島は2010年8月初旬のこと。

ニジマスの原種が生息するということで、ぜひそれを釣って確かめたいとの思いが旅の動機だった。

シベリアと異なり、とてもアクセスはいい。夏のみの直行便が成田から運行されていて、

4時間ほどでカムチャッキー空港へ。そして、そこから約3時間のドライブでボルシャヤリバーの

川岸に建つロッジに到着した。



                       * ボルシャヤリバー、川の風景 2010


川は、ピンサーモン( カラフトマス )の遡上のピークで、その群れにあたると1キャスト1ヒットの

入れ食い状態。どんなスプーンにも食いついてくる。拍子抜けするほどよく釣れた。

ピンクサーモンの遡上の期間は短いらしく、タイミングをはずすと川は空っぽで1尾も釣れない

ということもあるそうで、とても幸運に恵まれたようだ。



                    * 唯一、フライで釣った雄のピンクサーモン( カラフトマス ) 2010


ピンク以外では、ガリエツ( ドリーバーデン )、クンジャ( アメマス )が釣れる。

そして、懸案の " ニジマス "。釣れるのは、ほとんどピンクサーモンばかりで、諦めかけていたが

ボルシャヤリバーの小さな支流でやっと出会うことができた。釣れるのは、20cmクラスの若い魚

ばかりだったが、感動で胸が熱くなった。



                   * カムチャッカにニジマスは確かに存在した。小さくても感動の1尾 2010 



                * たった1尾だが、人生初のチャムサーモン( シロザケ )も釣ることができた 2010



                * ロッジの食事はさっぱりとしていて、かつ味わい深いロシアの家庭料理でどれも美味


【 諦めていたアトランティック サーモン】

大西洋鮭、アトランティックサーモンをルアーで釣りたい。過去にも何度か、その機会を探って

はいたもののほとんどルートが見つからない。カナダの東海岸側やロシア・コラ半島の河川などは

釣り人の間では有名だが、フライフィッシング・オンリーでルアーはNG。


また、欧州エリアもリサーチはしてみたものの、北米のサーモンフィッシングでは考えられない

ような高額の条件を提示されるなどの理由で実現を諦めていた。ところが2014年5月にルアーOK 、

しかもリーズナブルなライセンス料で釣りが可能な河川とロッジがノルウェーにあるとの情報を

トラウトアンドキング( 海外フィッシングツアー専門旅行社:リンク参照 )さんからいただく。


まだ、お客さんを送り込んだことはないとの話ではあったが釣行を即決。

2014年8月に、ついにアトランティックサーモンへの挑戦が現実のものとなった。

ノルウェーのトロンハイム空港から、不慣れな左ハンドル&マニュアルのレンタカーを借りて

約2時間半の悪戦苦闘のドライブ( エンスト5~6回や車線逆走etc )の末に夕刻、ロッジに到着。



                * 空港からロッジへ向かう幹線道路の周辺には、のどかな田園風景が広がる 2014



                       * ノルウェー、オルクラリバーロッジの玄関 2014


その後、釣りを始める前に釣り具( ロッドやリール )やウェーダー、ウェーディングシューズを

消毒屋さんに立ち寄って手漕ぎボート大の容器に入った消毒液でじゃぶじゃぶと消毒する。

生態系保全のために、外部からのバクテリアの侵入を防ぐためとのことだった。

初日の釣りのスタートは午後8時から。( 午後11時くらいまでは明るく釣りが可能 )

この日は午後10時までロッドを振ったが、あたりもなく終了。この年の夏、ノルウェーは異常な

猛暑で連日日中は最高気温が28℃にもなり、魚の活性は非常に低いとのこと。苦戦の予感が。



                         * オルクラリバーの釣り風景 2014

2日目の昼、12時くらいに下流のポイントで若干のライズが見られるようになり、そのライズの

あった対岸ぎりぎりにルアーをキャスト。着水から、1 ~2秒でリトリーブをゆっくり目に開始して、

リールのハンドルを2 、3回巻いたところでガツンとあたりがある。


1~2回低めのジャンプはあったが、どちらかというとボトムへ引っ張ろうというファイト。

2~3分のやりとりで無事にランディング。このときの気持ちは、やったー! 遂にアトランティック

を釣ったぞというよりも、" ホッとした~ " というのが実感。


海外釣り旅は、限られた日程の短期決戦のために " 最初の1尾 "をいつ釣り上げられるのか? "

あるいは、なかなか釣れないと " 果たして、ターゲットの魚に出会えないのではないか? "

などの焦りや緊張感を抱えての釣りとなる。なので、釣行前半に大物ではなくても、

求めていた1尾をキャッチできるとその後の釣りを心に余裕を持ってのぞめるからだ。

( ただし、そんな焦りや緊張感も決して悪いものではない。苦難を乗り越えて待望の、歓喜の1尾をキャッチできたらばの話ですが・笑 )



    * 初キャッチは2日目のお昼時。約60cmの雄、ルアーはスプーン12g( Coatac 金赤 )。その後はノーヒットに苦労する 2014


が、しかし・・・

その後、心にゆとりを持ってキャスティングを繰り返すものの、その午後と3日目の終日は

あたりすらない渋い状況。釣果はたったの1尾なのか!? と意気消沈する。3日目の釣り終了後、

ロッジで夕食を食べながらガイドと対策を議論。

ふと、思い至ったのは「夜明けがチャンスなのでは」ということだ。



                         * 川原でサーモンBBQを楽しむ 2014


初日から3日目までは、午前10時から午後3時と午後7 、8時から午後11時という2つの時間帯で

釣りをしていた。前述したように、日中28℃の高温と考えるとまず日中以降の午後帯はサケ科の

好きな低水温には中々下がらないだろう。


そして、夜明けから数時間経過した午前10時は快晴であれば、これもまた水温は上昇し、

魚の適水温を既に超えてしまっているのではないか。唯一期待できるのは、日が沈んで気温が

低下するとともに水温は下がるはずだから、夜明け直後なのではないか。


この仮説に基づいて、4日目からは、早朝午前4時半に起床。夜明けから釣りをスタートさせた。

この仮説は見事に的中。3回のヒットに恵まれた。が、しかし・・・

なぜか、すべてばらしてしまう・泣 午後もトライしたが、やはり相変わらずノーヒット。

アトランティックサーモンは、総じて食いが浅いのか。それとも、口や顎が柔らかいからなのか。

ヒットしても、とてもばらしやすいという印象だ。5日目の同じく夜明け。気温は7℃にまで下がる。


気を取り直して、ポイントに向かう。結果としては、この朝の時間帯が今回の釣行の中で、

もっとも活性が高く5回のヒットがあり、内2尾を何とかキャッチすることができた。本当に厳しい。

そして、最終日の6日目、早朝午前5時半にも1尾を追加。今回の釣りをすべて終了した。



                   * 最終日、4尾目のアトランティックサーモン。これにて旅は終了した 2014


とても渋い釣りにはなったが、念願のアトランティックサーモンと出会えた旅。

そして、太平洋鮭7種と大西洋鮭1種を原産地で釣る旅は26年の歳月を経て成就した。

さて、次なる海外釣り旅の目標はいかに? 現在、楽しく悩んでいる真っ只中にいる。

* ノルウェーの旅に詳細ついては、同じく釣り旅ブログvol.2「アトランティックサーモン、ノルウェーの旅」をご参照ください。

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