海外釣り旅 Q&A

Q8 海外釣り旅で考えられるリスクは何でしょうか?

 

① 交通機関のトラブルについて
 
海外釣り旅特有のリスクは、限られていると思います。
よく熊についての危険を聞かれるのですが( この件は後述 )、一番あり得るのは交通機関のトラブルです。
私の場合では、今までに2度、予定通りに帰国できなかったことがあります。
 
1度目は、アラスカで川辺に立つロッジに、濃い霧のために迎えのフロートセスナが来れなかったという話。
ロッジとアンカレッジの間は陸路が無いためセスナでの移動でした。
そして、数人乗りの小さなセスナは有視界かつ低空飛行のために、ジェット機なら問題ないレベルの霧でも
飛行できなくなることがあるのです( しかも、アラスカはよく濃霧が発生する )。
 
数時間後に霧は晴れてセスナは到着したのですが、折り返してアンカレッジに着いた頃には既に
帰国予定の航空機は飛び立った後でした。
( 幸いなことに翌日の便で、1日遅れで帰国できました。ただし、ファーストクラス1席しか空いておらず、
 しかも、正規料金!そのときの旅費全部に相当する大出費に )
 
2度目は、サハリンでキャンプ地から車でユジノサハリンスク空港に向かう途中で、タイヤがパンク。
その修理に時間がかかり、これもまた空港に到着した時点で、航空機はまだ滑走路にあったのですが、
搭乗手続きが締め切られていて乗ることができませんでした。
( 幸いなことに、このときも1日遅れで帰国できました 。ただし、ソウル経由成田という行程。通常は
 ユジノサハリンスク⇒函館の直行便なのですが、週に2~3便しかないためにやむをえなかったのです )
 
交通機関のトラブルは、もちろん日本国内でもあり得るのですが、確率的には海外( 特に辺境の地 )
のほうが高くなると言えると思います。
 
アラスカのフロートセスナや、サハリンのようなダートな道路を車で長時間移動( 1996年のことですが、
都市部の中心以外はまったく道路は未舗装でした )など、日本ではあまり考えられないケースが
あるからです。
 
当然ですが、これらを事前に回避することは不可能。少しでも旅の日程に余裕を持つしかありません。
なかなか難しいとは思いますが。私の場合は、帰国予定日の翌日までを休みにするという対処をして
います。これは、体を1日休めて、仕事にスムースに復帰するためでもあります。
 
② エンジンボートとライフジャケットについて
 
川や湖では、ロッジからエンジンボートに乗って、ポイントを移動しながら釣りをするのが一般的です。
釣り客数人がチームとなって乗船し、ガイド自身が操船することが多いです。ボートは屋根のないフラット
でシンプルな構造で、移動中は相当なスピード( 時速40kmくらいでしょうか。)が出ますので、強い風を
受けます。時には、水しぶきを浴びることもあります。
 
防寒・防水対応の衣服も重要ですが、転覆するリスクもありますのでライフジャケットは必須です。
一度だけですが、アラスカで乗っているボートが前を走るボートの波を受けて横転し、川に落下したこと
があります。川幅は100mはあろうかという大河で、しかも深くて足もつかない場所でした。
 
そして、本当にたまたまなのですが、ライフジャケットを着用していなかった。
ダウンのジャンパーの浮力に助けられて、命からがら、なんとか岸にたどり着きました。
岸の手前10mくらいのところでは、ジャンパーのダウンも完全に水を含んで浮力が弱まり、沈もうとする
体を必死に手で水をかいて支えながら、前進したことを記憶しています。
 
また、あまりの疲労と恐怖で、岸に泳ぎ着いた直後はしゃべることもできませんでした。
一つ間違えれば、命を失っていたかもしれません。
 
行かれるロッジでライフジャケットが常備されているかを事前に確認するとともに、現地でボートに乗る
際には必ず着用してください。過去にサハリンに行った際には、事前に確認できなかったために日本から
持参したこともありました。
 
また、たまにですが、ルーズなガイドもいて自身も着用せず、お客さんにも着用を促さない場合が
ありますので要注意です。私のアラスカでの落下事件は、まさにこのケースだったのですが、
海外や国内に関わらず、釣り旅では自分の身は自分で守るという危機意識が欠如していたと
反省しました。
 
③ 熊について
アラスカやカナダでは日本とは比較できないほど、その生息数が多いために、場所によるばらつきは
あるものの、釣りの現場では日常的によく見かけます。
 
釣りをしている川の対岸から、あるいは立ちこんでいる川の背後の森からと様々。
ただ、たいていはボートでの移動が多いため山の中を歩いててばったり出会うというケースは
ほとんどないでしょう。


( ただし、100%ないとは言えません。カナダの川で釣りをしていた際に、

釣りを終えて、川岸に止めていた車に戻ったときのこと。

車の陰に熊  ~ ブラックベア ~ がいたことに気づかずに、わずか2mの距離で

ばったり鉢合わせしてしまいました。一瞬、背中が凍りつき体が固まりましたが、幸いなことに熊も

私が怖かったのでしょう。後ずさりというか、四足のまま後方へ1mほど飛び上がり、

その後、森に猛スピードで走り去りました。たまたま、運がよかっただけで、もっと近距離で遭遇したら

大変なことになっていたかもしれません。釣り場では、常に注意が必要だと反省しました  )
 
ごくたまにですが、徒歩で川を釣り歩くということはありますが 、その場合はガイドの同行のもとに
可能ならば2人以上のチームで行動するほうがいいでしょう。そして、周辺の林の中を歩く際には、
手をたたく、大きい声を発するなどして、こちらの存在を逆にアピールして、熊が近づかないように
します。
 
日本の熊鈴も、同じ狙いですね。もし、徒歩で釣り歩く予定が釣り旅に組み込まれているならば
持参するのもいいかもしれません。また、一度アラスカで、若いグリズリーがどうしてもわれわれの
近くから動かないため、ガイドが熊よけスプレー:催涙ガスで追い払ったことがありますが、
私たちのような釣り人が持参する意味はあまりないと思います。
( スプレー缶は航空機内に持ち込めませんし、預けることもできません )
 
現地のガイドに言われたのは、熊も人が怖いので滅多なことでは襲わないということ。
大切なのは、熊に警戒心を抱かせないこと。
こちらから熊との距離を縮める動きは絶対いけないそうです。
熊が、獲物( あるいは、敵として認識した生物 )を襲おうと思ったら数十メートルの距離は一瞬と
思えるほどのスピードで走るらしいです。
また、子供の熊に遭遇することもあります。かわいいからと近づいては、絶対にいけません。
その近くには必ず母親の熊がいて、子供を守ろうとする本能は強く、もっとも危険と
言われています。
 
とにかく、熊が近くに現れた場合、人間は速やかに釣りをやめて、熊との距離を縮めることをせずに、
立ち去るのをじっと待つしかありません。彼らの棲家におじゃましているのは、人間のほうですので。
 
2013年の夏、アラスカのある川で、大きなグリズリーが現れ、20分くらいの時間で3尾のレッドサーモン
を豪快にたいらげました。なかなか緊張感のある時間でしたが、普段ならばTVのネイチュア特別番組
でしか見られない光景を生で見られたというような貴重な体験でした。
 
④ その他( とにかく無理をしないこと )
 
現地のルールや基本的なマナーを守る、安全に関するガイドの指示を守ることは当然のこととして、
その他のあらゆる局面で無理をしないことがリスクを低減させると思います。
 
例えば、体調が悪くなったら無理せずにロッジで休養する。一度、初日に風邪を引いているにも
かかわらず、無理して釣りをされた方が翌日から高熱で寝込んでしまったことがありました。
そして、最後まで釣りができなかったのです。とても無念だったと思います。
 
また、もし、病院に行かねばならないほどに悪化した場合には、辺境のために救急搬送も
簡単ではありません。
 
そして、釣りの現場でも無理をしないことも大事です。
川に立ち込んでキャスティングするときは、必要以上に深場に入らないなど。
フィールドが広大なために、流されても隣の人でも気づかない可能性があります。
 
自由で楽しい釣り旅も、「 個々人の自己責任の上に成立しているということを
いつも忘れない 」と、自戒を込めて思っています。
 
~ それでは、素敵な海外釣り旅を! Good Luck ! ~
 
 

アイテム: 8 - 8 / 8

<< 4 | 5 | 6 | 7 | 8