vol.5 スティールヘッド、南東アラスカの旅
2017年07月31日 16:50
今年2017年のGW時期に南東アラスカ・ヤクタットへスティールヘッドを釣るために訪れた。
その地には、スティールヘッドを釣ることができる素晴らしい川があることを知ったのは、
本サイトの海外釣り旅インタビューを通じて知り合ったTさんからの情報だった。
* 6尾目の84cm
昨年に続いて今年もヤクタットへ行かれるという話をTさんに伺い、ご無理を言って同行させていただき
この旅が実現した。Tさんに加えて、もうお一方 。こちらも海外釣り旅インタビューでいつもお世話になっている
Oさんに私という3人での釣り旅となった。
( 釣り旅の手配関係でもTさん、Oさんにはたいへんお世話になり、この場を借りて御礼申し上げたい )
* ヤクタット到着直前の空からの風景。成田 → シアトル → アンカレッジ → ヤクタット 3回飛行機に乗って、やっと到着する
今まで6回アラスカには釣り旅に出かけているが、そのほとんどは大きな川の本流であり、その川岸に建つロッジに滞在して
エンジンボートで本流及びその支流を釣り巡るというものだった。しかし、今回のヤクタットは随分と様相が違う。
ヤクタット空港から車で約20分と便のいいロッジはヤクタット湾に、つまり海に面して建てられていた。
* 滞在したロッジの母屋
* リビングにあるダイニングテーブル。ロッジはB&Bということで、主にここで朝食をいただいた
* ロッジからの眺め。ヤクタット湾の入り江と遠方には連なる雪山を望む
そして、目指す川へはロッジから車で移動する。ただし、これも約20分というアクセスの良さ。
ここからが面白いのだが、川は全長約30km、川幅は10~40m( 平均で20mくらいだろうか )、
水深は数十cm~1m強くらいと浅い。アラスカの大河とまったくイメージが異なる小規模河川なのだ。
* 川に入るためのアクセスポイントで釣り開始準備
車止めのあるアクセスポイントから、30分から1時間かけて川岸近くの森のトレイルと時には川の中を歩いて
移動して釣り場へと向かう。
* 自然豊かな森の風景は素晴らしいが、林道はぬかるみが多く歩きにくい。はく息も荒くなる
* 初日に訪れたポイント
約30分ほどの山歩きの末、初日の釣りがスタートした。
川幅は10~15mくらい。対岸の木々の下や倒木の周辺の緩やかな流れの中を多くの魚が上ってきている気配を感じる。
水深は深くて1mくらいで、浅いところは50cm前後。迷うことなく、5gのスプーンをキャストする。
こつこつとルアーにじゃれるようなアタリを感じるがなかなかヒットには至らない。。。
そして、、、遂に釣り開始約1時間でヒット! やはり野生のニジマスのファイトは格別だ。
鋭く暴力的なバイトとヒット後の走るスピードがぶっ飛んでいる。
寄せては逃げる、を何度も繰り返した後に上がってきたのは80cmのスティールヘッドだった。
80cmクラスを夢見て、初の海外釣り旅に出た1988年。カナダ・スキーナ水系では、まだ降海前の40cmの若い魚
しか釣れずに落胆したものだ。まだまだ私がビギナーだったこともあるが、滞在中で川を泳ぐスティールヘッドを
目撃したのはわずかに数尾。そもそも数が少ない希少な魚なのだろうと自分を納得させたりもした。
その後にシルバーサーモンやキングサーモン等をアラスカで釣り、再度スティールヘッドに挑戦したのは、同じくカナダの
バンクーバー島2004年のことだった。そこはスキーナ水系よりも、はるかに魚影は濃く70cmクラスを筆頭に
5尾のスティールヘッドをキャッチすることができた。その感動は今も忘れない。
が、しかし・・・ ここヤクタットは、" 桁外れ " だった!!!
* 2日目に今回最大の90cmを釣る。アクセスポイントから歩いて約1時間の上流、ガイド一押しのポイントにて
*5日目、78cm
* 約1時間歩いた末のそのポイントは、最後に川を渡って到達する
平均サイズが約80cmであることと、今までの川と比較するととんでもない数のスティールヘッドが遡上しているのだった。
釣果について先にお伝えしておくと・・・80cmオーバーが8尾( 内90cmが2尾 )、70cmオーバーが8尾、60cmオーバーが2尾。
5日間の釣りで合計18尾をキャッチした。ヒットの数はその倍以上( 激しいファイト故にバラシも多い )。
川岸に立ちこむと対岸の木陰や岩陰などの流れの中に複数の魚が定位しているのをそこかしこに見かける。
それほど魚影が濃い。それは遡上最盛期のサーモンそのもので、サケ科タイヘイヨウサケ属の一種であることを
まざまざと見せつけられているかのようだった。
春が訪れて新緑も芽生えつつあり、気温も昼間は10数℃と寒くはないのだがとにかく雨が多い。
ほとんどいつも濡れながら釣りをしている状況だ。ここ南東アラスカの多雨の気候について、
故・星野道夫氏は著書で次のように語っている。
「 南東アラスカは、黒潮系の支流であるアラスカ海流が沖合を北上しているため、湿った大気がそびえる海岸山脈にぶつかり、
年間四千ミリに達する雨と雪を降らせている。アマゾンの熱帯雨林を超える降水量が、南東アラスカの深い森と
大氷河地帯をつくっているのである 」( イニュニック<生命>~アラスカの原野を旅する~新潮文庫 )
今回大いに反省したことが一つあった。それは防寒対策。降りしきる雨のせいで、気温はそんなに低くないのに
手先や足先が耐えられないほどの冷たさとなり、釣りを一時中断せざるを得ないまでの事態に何度か見舞われてしまったのだ。
防水性と保温力の高いグローブや厚手のウールの靴下などは季節を問わず、北米の釣りでは必須アイテムだということ。
わかっていたのに油断していた。真冬用のダウンジャケットを用意するなど、ウエアばかりに意識が向いていたようなのだ。
* ラスト、18尾めの78cm。同サイズでもこの魚のような銀化と初キャッチの80cmのような婚姻色がはっきり出ている魚とが混在する
*上の写真は、今回最小66cmのスティールヘッド。実に美しい
スティールヘッドは多回産卵型で、川と海を何度も行き来して産卵行動を繰り返す。多いものは8回という記録があるそうだ。
66cmのこの魚は初めてか、2度目の遡上だろうか。本当のところは不明だが、まだ若い魚であることは間違いないだろう。
今回の釣りで感じたのだが、釣りは魚のサイズが大きければ大きいほど面白いというものでもないということ。
80cmを超える大型魚のパワフルで豪快な釣りも面白いのだが、俊敏さは70cmクラスに劣るように感じる。
最も速く走り、激しくジャンプしたのはこの66cmだった。パワーは大型魚に劣り、取り込みまでの時間も短い。
しかし、走る、跳ぶ、潜るなどの多彩な動きとスピード感あふれる圧巻のファイトは、バラシを回避するべく
直観的な判断と緊張感を最後まで要求される、どきどきのゲームなのだ。
海外釣り旅を始めて30年目になるが、今でも新しい発見があるところが楽しい。
* 川のど真ん中を歩いて下れるほど水深が浅いところも。釣り最終日、すべての釣りを終えて帰路につく
* ある朝。ロッジの朝食。オーナーの奥様の手料理はいつもおいしかった
* ロッジの玄関
* ロッジのリビング。夕刻、暖炉には火が入る
* 我々が宿泊したキャビン
ここからはおまけ。年間四千ミリに達する降水量が深い森と大氷河地帯をつくっているという、故・星野道夫氏の言葉を引用
したが、その氷河を釣り終了後の翌日に見てきた。全長100km以上、幅約10km、高さ60~90mという世界有数の
ヤクタット湾ハバード氷河。その絶景をご覧ください。
完