vol.23 釣らずに死ねるか!南米ドラド篇

2017年11月11日 17:30

今回のゲストは、池尻さん( 奈良県在住:以下、Iさん )です。

人生で一番釣りたかったドラドや一生に一尾だけ釣りたかったピラルクの釣りを中心にお話を伺いました。

*池尻さんは、海外釣り人インタビューvol.2ゲストの折茂さんにご紹介いただきました。ありがとうございました。


    * 8kg/80cmのドラド、アルゼンチン・イソロ湿原にて

インタビュアー 工藤( 以下、K )            2017年8月16日

K:

今日はお忙しい中、しかもお住まいが奈良県ということもあって電話でのインタビューで恐縮です。

早速なのですが、池尻さんと釣りとの出会いはいつのころからなのでしょうか?

Iさん:

釣りは小学校1年くらいのころからしていまして。お爺ちゃんが田舎で川釣りをしていたので。

夏休みに遊びに行っていた際にずっと釣りを。奈良なんで、海がないので川がメインですけど。

海で初めて釣りをしたのは高校くらいから。


  * 小学生のころ

K:

それが国内の海釣りにも留まらず、海外まで釣りに出かけるようになったのは、どんな背景があるのでしょう?

Iさん:

小学校後半の中学生になるか、ならないかくらいのころですが、当時「 釣りサンデー」という釣り雑誌があって。

その中で、「 一度は釣ってみたい世界の魚たち 」という企画があって。

そこにいろんな魚が紹介されていて、もちろん知らない魚ばっかりで。この魚全部釣ってみたいなって思ったんですね。

K:

へぇ~ 既に、子どものころにそういう思いを抱いた?ってことですよね。

Iさん:

突然なんですけどね。すごい!って思って。ピラルクくらいは知っていたのですが、他にも様々な未知のすごい魚たちがいると。

で、もうその雑誌は残っていないのですが、その時に" 釣りたい魚のリスト "をつくったんですね。

K:

いいっすね~ 小学生のころに。夢がある話ですね~

Iさん:

そうはいっても子どもなので、すぐに海外に行けるわけでもなく。そのリストを持ったまま、大人になっていって。

釣りは続けていたんですけどね。バス釣りとか。海も始めたりとか。で、最初は27歳のときですが、ネット環境も整ってきたこともあって

海外釣り旅専門の旅行会社のツアー情報などを検索で見つけたりして。

そもそも、一般の釣り人が海外へ釣りに行くことは別世界の話で無理だと思っていたのですが、これはもしかしたら行けるかもって。

K:

最初はそう思いますよね。大人になって、そこそこ経済的にも時間的にも余裕が出てきて。そして、情報も入ってくる。

Iさん:

そうですね。そこで、あの半分放置されていたリストを思い出して。何個か行けるんじゃないかと。そこで火がついて。

K:

あったじゃないか!このリストが!って。ははは~

Iさん:

そのリストに載っている魚を一つ一つ釣っていくことになるんですね。

ゲーム感覚のようにクリアしていくという、ボスを倒していくみたいな。

K:

ほぉ~ 面白いですね~ で、最初はどこへ行かれたのでしょう?


   * バラマンディ 1999年初の海外釣り旅

Iさん:

最初27歳の時に、オーストラリアに行きました。バラマンディを求めて。もちろんリストに載っていた魚で。

で、1回行けるとわかると。そっからいろいろと。次、次って感じで。

途中で、GT( ジャイアントトレバリー~ロウニンアジ )とかに浮気というのもありましたが・笑

K:

GTとかは、リストにはなかったわけですね。

Iさん:

はい。リストはほぼ全部淡水魚だったので。でも、GTは若いうちにやっておきたいというのがあったので。

年齢重ねて収入も増えれば、さらにより遠いところへも行けるようになって。特にここ7~8年くらいですかね、南米とかもろもろ。


   * GT 2007年コモドにて

K:

現在の年齢が45歳と伺いましたから、海外へ釣りに行き始めて17~8年くらいでしょうか。相当、旅を重ねてらっしゃるようですね。

Iさん:

毎年のように行くようになったのは、ここ10年くらいですけど。そして、海外の旅といっても旅行とか、旅ありきではなくて。

要は、魚が釣りたくて。釣りオタクなんですよ。

K:

ははは~ どこそこに行きたいが先ではなく、この魚を釣るにはどこへ行くべきかってことですよね。時期も含めて。

Iさん:

はい。そうですね。あとは効率もですね。これは、ツアーで行ったほうがいい。一人で行ったほうがいいな、とか。

スタイルは全然こだわっていなくて。釣るために、何が一番ベストかっていうことをいつも考えていまして。

K:

なるほどね~

Iさん:

釣りオタクなもので。オマケでいろいろ旅的なものは楽しみますが、あくまで最初は対象とする魚を釣ることが目的で。

あと天然にこだわりたいというのもありますね。

昨年、初めてタイの釣り堀に行ったのですが、天然ものを釣るまでは行かないでおこうと思っていました。

K:

そこ結構分かれ道かもですね。

タイの釣り堀で釣ってハマッて、野生魚を釣りに行くようになったなんていう方の話も聞きますしね。

Iさん:

そうですよね。私は、最初は小さくてもいいから天然魚っていう思いがありますね。

K:

そこは明快なんですね。今まで例のリストの攻略とかは、どんな順番で? 優先順位とかあったのでしょうか?

Iさん:

そうですね。バラマンディは別として、基本的には難しい魚から釣っていこうという考えで。例えば、絶滅しそうとか。

K:

釣りとして難しいというより、希少で今後の自然環境の悪化などで釣り自体が難しくなってしまう心配があるとか?

Iさん:

そうですね。ピラルクとかは、本当にそう思いますね。減りつつあるなっていう魚は先にと。

K:

そんな中で、特に思い入れのある魚はありますか?

Iさん:

リスト全体の中で優先順位はありますが、その中でも、人生で一番釣りたかった魚は、" ドラド "なんですよ。

K:

いいですよね~ ドラド!

Iさん:

なんで、ドラドかと言うと。昔、初めて見た時の写真がすごくインパクトがあって、こんな色の魚が世の中にいるのかと。

またその名前の意味( =黄金 )を聞いたときに、すごく惹かれたというのもありました。

他の魚に比べて情報も少なく、未知の魚という感じもあって。アマゾンからは少し離れたところにいるからかもしれないですね。

K:

そのドラドを釣り上げることができたのは、いつ?そして、どこでだったのしょうか?

Iさん:

中々情報もなくハードルが高く、まずツアーらしいものがなくて。今でこそありますが。場所とかも今一つわからなくて。

ドラドへの思いもありつつ、先に行ける魚を釣りに行ったりしてましたね。南米は休みを10日間くらいは必要ですし。

で、たまたまトラウトアンドキングさん( 海外釣り旅専門旅行会社:リンク参照 )のツアーが年末年始という時期に企画されまして。

その年の3~4月にWEBサイトに告知がアップされて、すぐ申し込んだんですよ。

K:

ははは~ 来たーって!いう感じですね。8カ月くらい先だけど。

Iさん:

これを逃したら、一生行けないかもしれないと思いまして。2012年の年末から、場所がアルゼンチンでした。

2か所ほどいい湿原があって、イベラ湿原という有名なところの近くのイソロ湿原というところで、釣ることができました。



   * イソロ湿原


   * こちらもイソロ湿原での釣り風景

K:

アルゼンチンといっても、ブエノスアイレスからはまたかなり遠いんでしょうね?

Iさん:

奈良 → 成田 → ダラス → ブエノスアイレスと飛んで、ブエノスアイレスからは車で7時間くらい。

それまで、そこまで遠いところに行ったことがなくて。

K:

なかなか着かない・笑 で、宿泊はキャンプ? ロッジとかはあるのでしょうか?

Iさん:

ちゃんとしたロッジでしたよ、イタリア人経営のおしゃれな感じで。


   * ロッジのリビング

K:

それはいいですね。で、釣りのほうは、どんな感じだったのでしょう?

Iさん:

釣りとしての試行錯誤だったんですね。こんなルアーがいいかなとか、こんなカラーがいいかなとか。

で、初日の夕方に40cmくらいの小さなドラドが1匹釣れまして。引いているときから小さいとわかっていたのですが。

さすがに1匹目だけに感動しましたね。



  * 初めてヒットしたドラドとのファイト



   * 初めてキャッチしたドラド

K:

ホッとしますよね。サイズに関わらず、求めた魚がひとまずキャッチできると。

Iさん:

そうですね。ファイト中は緊張しまくりで。よく飛びますしね。

K:

そうなんですね。ドラドって、写真でしか見たことがないのですが水しぶき上げてジャンプしている印象が強いんですよね。

バッシャー!っていう感じで。やっぱり、その飛び方って派手なんですか?

Iさん:

はい、派手ですね~淡水魚の中では、ジャンプの高さや回数とか。一番なんじゃないですかね。

バレそうなので、心の中では " ジャンプしないで!" って叫んじゃいますけど。



   * ドラドのジャンプ

K:

ははは~ 楽しいけど、ドキドキですものね。

Iさん:

そうですね。それと面白いのは、ゲームフィッシュだなっていうか。攻略すれば、した分だけ釣果も上がっていくんですね。

ちゃんとパターンめいたものがあって。そうじゃない魚もいるじゃないですか。ハンティングみたいで。

K:

はい、はい。そういう魚って確かに面白いですよね。半日、1日毎にわかってくるというような。

Iさん:

段々と使うルアーも絞られていって。そんな中で一番思い出に残ったのは、4日間の釣りで3日目のことですが。

その場所ではグッドサイズの大物の魚、8kg・80cmくらいのやつを釣ることができて。

それが一応最大でした。これくらいになると、怪魚感が出てくるんですよね。



   * 8kg/80cmのドラド

K:

あ~ わかります! 何かコワモテのあの感じですよね。

Iさん:

ドラドって、小さいときはトラウトっぽいキレイさがあるのですが、4~5kgを超えてくると何か急に怪魚らしくなってきて。

でもキレイで。トラウトっぽい美しさといかつい怪魚系の両面を持っている魚なんですよね。



   * ドラドの顔をアップで

K:

へぇ~ 何か魅力あふれる、個性的な魚なんですね。

ところで、水から上げたときは名前のように金色に輝くのでしょうか?よく見る写真では、黄色っぽい感じですが。

Iさん:

太陽の光を浴びると、黄金に輝きますね。そこの釣り場の水は濁りがあって上からは魚はよく見えないのですが

釣り上げると、ギラって光るんですよね。たまりませんね!



   * 黄金色に輝くドラド

K:

いいっすね~!!でも、一番釣りたい魚を釣ってしまって。その後はどうしましょう?って感じがするのですが。

Iさん:

はい。最終目標は達成しちゃったなと思って。釣らないと死ねない魚は釣っちゃったな~っと感慨に耽りつつ

後は淡々とリストの魚を釣っていく生活という・笑

K:

ははは~ コツコツとですね。

すごくその気分わかるのですが、とても感動すると同時に一方でちょっと寂しくなったりしませんか?

Iさん:

はい。その場では、すごく嬉しくて感動しましたけど釣っちゃったかっていう寂しさはありますよね。

でも、じゃあ、もっとデカいドラドを釣りに行こうかっていうことにはならないんですよね。なんか。だったら、他の魚へ行こうと。

ドラドも数が減ったり、サイズが小さくなったりとで早く釣らねばという思いはありましたけど。

K:

特に淡水魚の大きい魚は、環境の変化のインパクトを受けやすくて絶滅の危機に直面している種も多いですからね。

釣り人としては、急がねばって思いがありますよね。

Iさん:

そうですね。本当にそういう危機意識みたいなものが一番あったのが、ピラルクとかですね。

2012年から2013年と年を越すときにドラードを釣りに行ったわけですが、ピラルクは、2014年にチャレンジしまして。

この辺から、狂い始めていて。。。

K:

ははは~ 連続して攻めてますね~

Iさん:

ドラドと一緒で、ピラルクもどうしたら釣ることができるのだろうと。ずーっと情報を探し続けていて。

釣っている人もいましたが、どうも南米まで行っても、その確率は高くないなと。これはちょっとギャンブルだなと躊躇して

いるところもあったんですね。で、2010年くらいからですかね。

ガイアナっていう国に、ピラルクがめっちゃいるらしいっていう情報が出回り始めて。

K:

そうなんですね。私はついこの2~3年前くらいに、ガイアナという存在を知るようになったのですが、

結構前から少しずつ情報は広がっていたのですね。

Iさん:

たぶん、白人とかが先に入っていったのだと思いますが。You Tubeとかに大きいのを釣っている動画がアップされたりしてましたから。

それも程なくして、こちらも2012年くらいからツアー企画が出てきて。

これは世界中から釣り人が殺到するから、早く行かないとヤバイぞと思って。

K:

釣り人には、人気の高い魚ですものね。焦りますよね~

Iさん:

それも即決でしたね。これは年末年始ではないのですが、仕事柄、休暇は割と事前に調整ができるので。

ことときは2014年の年明けすぐに、その年の夏休みを決めて「9月○日から取りますので」って申請しましたね・笑

K:

ははは~ いいっすね~ 大事ですよね! その行動力!

Iさん:

周囲に、そういう人間なんだと印象づけるという・笑

K:

そうそう、仕事関係の先輩や上司とかに。そういう話される方、このインタビューで結構いらっしゃいます・笑

Iさん:

で、2014年の9月にガイアナへ行ったわけですが場所がどのへんかも知らず。

ツアーを申し込んでから初めて知ったくらいで。ああ、ここなんだっていう。



    * セスナから望むガイアナの原野

K:

行ってみてそこは、噂通りにピラルクなどの魚はたくさん生息していたのでしょうか?

Iさん:

半信半疑だったのですが。現場着いたら、そこらじゅうでピラルクの呼吸している様子が。。

K:

マジっすか! ははは~

Iさん:

びっくりしましたね~ サイズも半端なくて、2mくらいの魚は普通にいますし。へたすれば、3mあるんじゃないかという魚も。

ここはジュラシックパークかと!ピラルクって古代魚ですから、きっとここは遠い昔からこの光景なのだろうなって。

K:

へぇ~ それは、めちゃくちゃ興奮しますよね~



    * ジャングルの中、ボートでポイントへ

Iさん:

でも、なんか居心地悪いんですよね。

K:

え? それはどういう意味でしょう?

Iさん:

人間が誕生するよりも以前からの世界だと思うんですよね。ピラルクという生き物そのものもそうですし。畏れ多いような。

K:

なるほど。何か生き物として人間は新参者で、お邪魔しているって感じですよね。ある種、畏敬の念ですよね。わかるな~

Iさん:

それと友人などからは、ピラルクは蘇生が難しく死ぬ確率が高いよって言われていたんですよね。

K:

そうなんですか?

Iさん:

ファイトが激しいために、窒息状態になるみたいですね。そのまま放すと泳いでは行くのですが、次の呼吸ができないようで。

K:

溺れちゃうんでしょうね。

Iさん:

回復のためには、1~2時間かけないといけないそうです。人の手を使って空気を吸わせてあげるとか。

さっきお話したように、畏敬の念を抱く魚だけど、釣ったら殺してしまうっていうのは何か複雑というか。

なので、行く前から釣るのは絶対1匹だけにしようって決めていました。

K:

で、その1匹を釣るのは、苦労されたのでしょうか?

Iさん:

釣ると死んでしまうのはまずいぞっていう機運が現地で高まっていた時期で前年まではエサ釣りOKだったのですが、

私が行く10日前にエサ釣りが禁止になって。エサ釣りだったら楽勝で釣れると言われていたのですが。

これは、やばいぞと。ルアーを急遽用意して。周りにルアーで釣った人もいないのでよく分らないままに。

で、初日に1本かけたのですが。フッキングがすごい難しいんですね、ピラルクって。ばらしてしまって。

呼吸中なんで、そんなにチャンスもなくて。

K:

そうなんですね。何か緊張しますよね。

Iさん:

はい。これでもうチャンスはないかと。。たぶん、ここに来るのは一生に一回だろうなって思っていましたし。

どえらいプレッシャーだったんですね・笑

K:

ははは~ ありますよね~ よく釣りをやらない方から、「そんな秘境の大自然の中へ入っていって。楽しそうですね!」

って言われること。でも、どこか悲壮な覚悟をして行ってたりすることもありますからね。

こんなところまで来て、1匹も釣れなかったらどうしよ~って。

楽しそうって声かけてくれる方が職場の上司や先輩だったりすると長く休む手前、楽しいことばかりじゃないとも言えないし・笑

Iさん:

そうそう。1回行くのにも、お金もかけて、たいへんな労力だったりしますものね。そして思い切った長期休暇も取って。

二度と来られないかもしれないって思ったり。そのプレッシャーが結果的に楽しいことなのかもしれませんが。

K:

釣り人のドM気質とでも言いましょうか・笑 で、次のチャンスは訪れたんですよね?



    * ベースキャンプ、ガイアナにて

Iさん:

毎日同じポイントにだいたい行っているので、だんだんと掏れてくるんですよね。ピラルクも賢くて。

すごいのは、2日目、3日目となってくる毎に、キャストの範囲から外れていくんですよね、魚が。

K:

へぇ~!!

Iさん:

最初は近くで呼吸が出ているのですが、だんだんと遠くなっていって。調度、キャストの範囲外でしか出なくなるんですね。

こっちもそうなったら、リーダーを外してPEライン直結で少しでもキャストの距離を延ばそうとしたり。

リールをベイトからスピニングにしたりとか。ほんの数mなんですけど。

K:

魚が何でキャストの飛距離わかってんの?って感じですよね・笑

ちょっと質問なのですが、先程からのお話ですとピラルクの呼吸に合わせてキャストするようですが、それは見た目でわかるものなのですか?

Iさん:

はい。ピラルクは、空気を吸う呼吸のために水面まで上がって来るんですね。体も出ているくらいに。

それを目視して、キャストするってことになります。逆に言うとそれがないと、キャストすらできないんですね。



            * ピラルク 呼吸撃ち( 待つ時間が長いが、呼吸が出たら瞬時に投げるという釣り )

K:

なるほど~ そういうことなのですね。やっとイメージできました。

Iさん:

呼吸のときがキャストのチャンスなのですが、警戒心が強いのであんまり数多くキャストするのも良くないらしく。

慎重にやらないといけない。キャストのタイミングでは、しゃべってはいけませんし、ボートのエンジンも切ってオールで進んで行くという。

K:

へぇ~ そんなにセンシティブなんですね。なかなかチャンスも少ないということですよね?

Iさん:

リールもサミングしたままで、呼吸が出たら瞬時に投げられるようにと。で、ずーっと呼吸を待つわけですが、

半日で2~3回しか投げられないこともありましたね。精神的に結構参るんですよね。投げられないって、すごいストレスですから。



    * ピラルク釣りのポイント風景

K:

ははは~ 釣り師にとっては、拷問みたいな・笑 そういう釣りなんですね。私のように、ピラルクの釣りを知らないと

あの写真で見る大きな魚体からは、もっと大雑把な釣りなんじゃないかって思っちゃってました。新鮮な驚きです。

Iさん:

で、2日目はまったくキャストすらなかなかできず。絶望感漂う感じで。

3日目にまあまあのサイズ( 正確には計測していませんが、180~190cmくらい )をかけて。

頼むから、ばれないでくれ!って祈りましたね。何とか釣り上げることができて、ホッとしました。



   * 遂に釣り上げたピラルク



   * ピラルクの顔をUPで

あと面白いのは、釣りオタクなんで、あらゆる釣りをするのですが。

ピラルクのような、今まで釣ったことのない魚を釣る遠征の際に、それが意外にも役に立ったりするんですよね。

K:

ほ~ 例えば??

Iさん:

ピラルクですが、全然魚は違いますが、カンツリ( 管理釣り場 )と一緒だなって。

ボトムをずっと巻いてきたりとか、ちょっと軽くボトムでバンプさせたりとか。やっていることは一緒なんですね。

また、ピラルクのフッキングの仕方は、これも全然違う魚で数年前に行ったマレーシアの海で釣ったセイルフィッシュと一緒なんですね。

竿と糸を一直線にして引っ張るというやり方で。竿の弾力を使うともうかからない。

両方とも、顎が硬い魚なんですよね。マレーシアの海で覚えたセイルフィッシュのフッキングのやり方がガイアナのピラルクに通用する

とは思わなかったのですが、いろんな釣りをしているとつながるところがあるものだなって。



           * セイルフィッシュ マレーシアにて



   * ジャンプするピラルク ガイアナにて

K:

へぇ~ それは面白いですね~ で、その1本を獲ってピラルクの釣りは終了?

Iさん:

そうですね。その1匹をフッキングしたときは嬉しいのですが、すごく罪悪感を感じて。

身勝手な話かもしれませんが、自分より大きな生き物が死ぬかもしれないことに加担するって重みがある感じがするんですよね。

ただ、幸いに僕が釣ったピラルクは針掛かりが浅くて、掛かった場所も良くて。

ガイドいわく「 大丈夫。生き残るよ 」って。逃がしたあとに1回呼吸もしたので。

K:

それはホッとしますね。

Iさん:

はい。で、これ1匹でいいやって。よし、次はサイズアップしようって気にはまったくならない。

一生に1匹だけ釣る魚って思っていましたから。僕にとってのピラルクはこいつだけでいいと。

ドラドは違うんですよね。ドラドはゲームフィッシュでその釣り方を突き詰めていく楽しみがあって。

いつか機会があれば、再びチャレンジしてもいいかなって思う。

一方、ピラルクは何かフィッシングと言うよりもハンティングみたいで。この辺のボーダーラインが自分でもよく分らないのですが。

K:

なるほど。ピラルクを釣ったあとは、釣りはしなかった? そんなわけないですよね?

Iさん:

ガイアナにはいろいろ魚がいるので、ナマズとか。一生に1匹だけ釣ろうと思っていたピラルクを釣ることができたあとは、

なんか思いっきり開放されている状態で釣りが楽しめました。それまでは本当に苦しかったですから・笑



    * レッドテールキャットフィッシュ



    * アロワナ

K:

ははは~ もう何が釣れても釣れなくてもいい・笑 これはよっぽどの釣り好きな人じゃないと分らない心理でしょうね~

だって、好きでやっている釣りが苦しいんだから。意味不明です・笑

Iさん:

ははは~ チャンスが二度とないかもしれないわけで。

K:

切なくもある、釣り師心ですね~ 苦しい思いもしながらも立て続けに釣りたい魚を釣ることができて良かったですね!

Iさん:

そうですね。それと先にアルゼンチンに行っていて良かったです。そのあとは、どこに行っても遠く感じない・笑

K:

ははは~ でも、一番釣りたいとか、一生に1匹は釣りたいとか。そういう魚を釣っちゃって、これからどうしましょう?

Iさん:

ドラド、そしてピラルク。釣りたい魚リストの中でもクライマックスですし、僕の釣り人生の中でもクライマックスですね。

K:

ははは~ そんな~ 寂しいじゃないですか。今後はピーク過ぎて下り坂みたいな・笑

Iさん:

と言うか、こからは気楽に。釣りたい魚で絶滅の危機という種類はもういないので

今後のんびりやっていけば、時間さえかければなんとかなるかなっていう。

K:

そうそう。今日お話しを聞く前に、どんな釣りをされているかをリサーチしようと思ってFacebookを拝見したのですが、

直近ではナイルパーチなんかも釣られていますよね?これも何か思い入れがありますか?

Iさん:

これがですね~ 釣り始めて30分で釣れちゃったんですね。釣った嬉しさはあるのですが、あまり印象に残っていないんですよね。

正直、もうちょっと苦労したかった・笑



   * 30分で釣れたナイルパーチ ウガンダにて

K:

ははは~ そういうケースもありますよね~ これまた、釣り人のわかりにくい心理ですよね。

Iさん:

複雑ですよね。1本目はエサで釣ったのですが、それよりも4日目くらいにルアーで釣った魚の方が嬉しかったですね。

90cmくらいと、1本目よりも2まわりくらい小さかったですが。

1本目は、現地着いてすぐでしたし。釣り方も分らないままに、ガイドが用意してくれた小魚を針につけて、ただぶっこんだだけなので。



    * ルアーで釣ったナイルパーチ

K:

ははは~ 自分で釣った感がないっていう・笑

Iさん:

で、もう1匹エサで同じようなサイズを釣ったのですが。ポイントを自分で見極めて。

さらに満足感を得ようと、エサにする魚をまず自分で釣ったという。単なる自己満足ですが。

K:

ははは~ そういうちょっとしたことって大事ですよね~

自分で釣った感が違ってきますものね。ところで、釣った場所はエジプトでしょうか?

Iさん:

エジプトではなく、ウガンダです。そもそもナイルパーチは行けば釣れる魚だとイージーに考えていたのと、

政情不安とかエボラ出血熱などの感染症リスクとかもあって後回しになっていたんですね。

でも、そろそろ行けるときに行かないとヤバイかなと思って。ここ数年タイミングを見ていまして。

政治的にも病気的にも落ち着いてきたので今年行くしかないと。エジプトはやや政情不安がまだあるかなと感じたので、

ウガンダへ行くことに。ツアーとかはなかったので、今回は自分で手配しました。



    * ウガンダの街の風景

K:

ウガンダですか。 あまり情報なさそうですね。

Iさん:

そうですね。ウガンダの今回行った場所は、まだ怪魚ハンター的な方があんまり行っていないようで、情報も比較的少なかったですね。

調べていると、行けばなんとかなりそうかなっていうことで決めたのですが。行ってみたら中々すごい場所でしたけど。

ガイアナがジュラシックパークなら、ウガンダはサファリパークっていうか。

K:

アフリカの典型的な風景っていうイメージでしょうか?

Iさん:

典型的以上でしょうか。動物を見るツアーに参加しているわけではないのですが、釣りしているだけでゾウとかキリンとか。

カバとかも、そこら中にいて。カバは、ラインをまたいで行きますしね。その際には、竿が揺れるんですが。

慣れるまでは、大きな魚のあたりかと思ったり。



    * ナイル川 ゾウとカバ



    * ナイル川 カバの群れ

K:

ははは~ いいですね~ カバがいるってことは、沼かなんかですか?

Iさん:

川ですね。ナイル川の本流で。滝( マーチソン滝 )があるんですね。その滝壺から1kmくらいのところで釣りしているんですが。

本流は100~200mの川幅がありますが、滝壺では5mくらいの幅になるんですね。

魚留めみたいな。ただ水量がすごくて、流れは激しいのですが。



    * ボートから見たナイル川



    * マーチソン滝

K:

その周辺に魚が集まっている? カバも?

Iさん:

そうですね。シャローなのか、カバの群れと魚が集まるところは近いのでしょうね。

K:

カバを避けては通れない・笑 で、カバとの出会いは強烈だけど、釣り自体は印象うすい!?

Iさん:

そうですね。残念ながら。そんなの初めてですけどね。ほとんどが必死で苦労の連続なので。でも、たまにはいいかなと。



    * ナイルパーチとのファイト

K:

ははは~ その他、釣りでも風景でも、特に話しておきたいような思い出深いことって何かありますか?

Iさん:

そうですね。

アルゼンチンに行ったときのことですが、スコール( 激しいゲリラ豪雨)と雷と夕焼けが同時に見られたんですね。

日本じゃ、まずあり得ないような赤い色で。激しい雨に夕日が射し込んで、虹もできて。



   * 夕焼け アルゼンチンにて

K:

それは感動的な風景ですよね~

Iさん:

ガイアナへ行くときは、ニューヨークでのトランジットだったんですね。

人間の文明がもっとも栄えている都市を見て、その後にジュラシックパークのような

原始の世界に入っていくというのも、その落差がすごくて感慨深かったですね。



   * ガイアナへ行く際に寄り道したニューヨーク

K:

目的は魚釣りなんだけど、地球上に残された大自然の中へと入っていくので、そのときに見ることができる風景とかも貴重ですよね。

そのためだけには中々行かないですものね。

Iさん:

そうですね。特に、僕は魚ありきなので。魚決めてから、行く場所を決めるので。

釣りがなければ行くことはないところへ、強制的に連れていかれるみたいな感じですからね。

なので、観光という意識で見るものとは、ちょっと違うなって。

観光で海外とか何度か行ってはいるのですが、風景とか何にも覚えていないですから。

K:

ははは~

Iさん:

それが、20何歳かに釣った1匹目のバラマンディをどう釣ったかとかは、いまだに鮮明に覚えているんですけどね。

そこで見ていた景色とか、風の感じとか、臭いとかも。

K:

へぇ~ ちょっと病気な感じもしますね~ 人のこと言えませんが・笑



    * こちらは、モンゴルで釣ったタイメン 2014

Iさん:

ぶらぶら歩いているのと違って、何か感覚が研ぎ澄まされているんでしょうね。釣りのときは。

K:

普通の観光は寛いでいるというか。緩みっぱなしなのかもしれませんよね。良く言えばリラックスしているわけですが。

Iさん:

ただの観光の場合は、なんか音がしても反応とかしないですよね。釣りだったら何の音だろう? 臭いだったら何の臭いだろう?って。

K:

ははは~ わかりますね。振り向きますよね。

ところでいろいろ話を伺ってきましたが、「 釣りたい魚リスト 」の方はどこまで進捗しているのでしょうか?



    * キングサーモン アラスカにて 2016

Iさん:

はい。あとはターポンを釣ったらすべてクリアっていうところまで。

K:

そうですか~ いよいよですね!ターポンは淡水域にも入ってきますが、分類としては海水魚。

それ以外の今まで海外で釣ってきた魚は、淡水魚ですよね。そこは何か思いとかありますか?

Iさん:

海釣りもするのですが、海って繋がっているじゃないですか。

一方、淡水魚は大陸ごとでぜんぜん魚が違うので、そういう面白さがありますよね。

K:

なるほど。その視点は面白いですね。その土地土地の固有の進化と生態系の中で生きているってことですよね。

Iさん:

そこに行かないと釣ることができないというレア感がありますしね、淡水魚は。

海のない奈良県で育ったので、海への憧れは強いのですが・笑

K:

ははは~

さて、仮に近々にターポンが釣れたとしたら " 釣りたい魚リスト " はクリア!なわけですが。その後の釣り人生はどうしましょう?

Iさん:

最初のリストは小学生のころに作ったわけですが、それはもう1種でクリアするのですが、

様々な釣りをしていくうちに釣りたい魚も増えていってもう一つのリストが既に出来上がっていまして。

今度は小学生のときには知らなかった魚を釣っていくという。

K:

大人になってからのリストっていうことですね。夢はまだまだ続いていく!

Iさん:

でも、それはオマケっていうか。そんなに急ぐものでもないし。1つ欠けても後悔もしないし。

淡水・海水様々な魚の広範なリストで、一生かかっても全部はクリアできない数っていうリストで。

タイミングが合ったやつだけ釣っていこうと。それと来年にターポンを釣ったら、巨大魚系もやってみたいですね。

スタージョンとか、ヨーロッパオオナマズとか、アリゲーターガーとか。

K:

マイペースで、ゆっくりと。まさに大人な釣りっていう世界ですね。

Iさん:

頑張るのは、ターポンで終わりかなって・笑

K:

ははは~ たくさんの面白い話をありがとうございました!!

<編集後記>

釣りたい魚リスト。そして、人生で一番釣りたい魚 “ ドラド ”に

一生に1匹は釣りたい魚 “ ピラルク ”。。。

それを釣るまでのプレッシャーや苦しみを味わいながら、釣り上げたときに

心底喜びをかみしめる。そんな釣り人の情熱と心のゆさぶりが感じられる、

とても味わい深いインタビューでした。

また、次回「海外釣り人インタビュー」をお楽しみに!