vol.7 セイルフィッシュ、そしてターポンへ
2014年11月14日 08:38今回は、セイルフィッシュ( バショウカジキ )やターポンのフィッシングについて
槙さん( 東京都在住 )にお話を伺いました。
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* セイルフィッシュ 2003年 コスタリカにて。
幼い頃から釣りに親しまれていて、なんと小学校5年生( 昭和40年 )の時には乗合船に乗って、
カレイ釣りを体験。その後、投げ釣りや磯釣りと様々な釣りをされて、高校2年生( 昭和46年 )の
頃から一人で神津島へ磯釣りに通われて、シマアジなどをよく釣っていたそうです。
忙しい時には、釣り舟の手伝いもしていたほどハマっていたとのこと。
また、昭和49年頃に下田にできた忠兵衛丸という有名な船宿の遠征船の
釣りにも行くようになり、そこでカジキを釣ったりと。
そんな槙さん( 以下、Mさん )が、いつ頃、どんなきっかけで海外へ釣り行くようになったのか。
興味あるところですね。それでは、インタビュー開始です。
インタビュアー 工藤( 以下、K ) 2014年10月4日
K.
社会人になって、一時ブランクがあったけど、ぽつぽつと国内で海釣りを続けられていたと伺いましたが、
海外へ釣りに行くようになったきっかけは、どんなことだったのでしょうか?
Mさん.
工藤さんは、丸橋英三さんってご存知ですか?日本人では、海外の釣りの先駆けですね。
今でもSABALOっていうお店( 釣具屋さん )をやっています、日本橋で。以前は有楽町にあったのですが。
特にラインクラスを決めて、I.G.F.Aルール( * )に従って大きな魚を釣って競い合うというのを
始めた日本の走りなんですね。
* I.G.F.A.=International Game Fish Association( 国際ゲームフィッシング協会 )
その丸橋さんは、確か1984年だったと思いますが、クリスマス島でロウニンアジを釣って日本人初となる
I.G.F.A.世界記録( 16lbラインクラス )を樹立したと記憶しています。30~32kgだったと思ったけど。
それから、アングリングで海外の釣りを紹介していました。ターポンとか。
K.
あの頃のアングリングは、いい雑誌でしたよね。私もよく読んでいました。
海外釣行の記事なんかを良く切り取ってファイリングしていたりしましたから。
丸橋さんについては、私は知らなかったのですが、そんなパイオニアの方がいらっしゃるんですね。
Mさん.
はい。おそらく、丸橋さんが日本で始めてだと思いますが、セイルフィシュをフライで釣るというスタイルも。
その頃、海外の釣りに興味を持ち始めていて、そんな話をお店でいろいろ伺いまして私も行ってみようかと。
K.
なるほど~ そういうことだったのですね。
Mさん.
そうした経緯で最初に私が海外に行ったのは、オーストラリアのブリスベンでした。1988年の暮れのこと。
20lbクラスのラインを使ったライトタックルでブラックマーリンをエサ釣りで狙うというものでした。
50kgくらいのがかると面白い釣りができました。
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* 1988年 オーストラリアのブリスベンにて。
1989年のゴールデンウィークには、カリフォルニア半島の先端のカボサンルーカスへ。
釣りの対象は、マカジキ( ストライプトゥマーリン )。こちらは、20lbラインでトローリングの釣りでした。
でかいと170lb( 約77kg *)くらいのもいるんですね。
いい時期だったんだと思いますが、信じられないほど数もうじゃうじゃいまして。
いたるところでフィンニィングといって、背びれ出して泳いでいる。
サバの巨大な群れを巨大なマカジキの群れが追っているんです。
*1lb( 1ポンド )= 約453グラムです。以下、lb表記はこれを基準に計算ください。
そこにいって、マカジキの鼻先に生きたサバを放り込む。そういう釣りで。
当時はキャッチアンドリリースではなく、港まで持って帰っていたりしました。
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K.
このマカジキは、すごいですね!
Mさん.
こういう巨大なマカジキも面白いのですが、その他には、ヒラマサとか、ハタ( 下の写真 )とかも釣りましたね。
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釣り場としても有名ですが、今はすごいリゾート地になっているんですよ、カボサンルーカスは。
当時でも、こんなふうに出店があってタコスが食べられたりしましたが。
アメリカから近くて、ロスからは3時間で行けるから手軽な観光地なんですね。
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* 1989年 カボサンルーカスのリゾート風景。
K.
あ~、これは楽しそうですね!
Mさん.
それと自然環境としても面白いところなんです、カリフォルニア半島は。地形の移行期に大陸から
裂けてできたんですね。なので、湾はものすごく深くて、深いところは水深3000mくらいある。
コロラド川から大量なチッソやリンとかの有機物が海に流れこんでとても豊穣な海です。
深い海峡の中にはマッコウクジラなどもいて、生態系が豊かなところなんです。魚も多く入ってくる。
生物学的にも自然科学者もすごく興味を持つところです。
飛行機から見ると陸地は荒涼とした岩山で、それが急に海にすとんっと落ちている
というなんとも殺伐とした風景ですが、海はとても豊かです。
K.
初めて知りました。そういう自然環境なのですね。
ところで、コスタリカによく行かれているそうですけど、いつ頃から通われているのでしょうか?
Mさん.
89年夏に初めてコスタリカに行ったんですよ。
コスタリカこそ、釣りのパラダイスだと、丸橋さんが強く勧めてくださって。
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* 1989年 セイルフィッシュ、コスタリカにて。
コスタリカは中米の間、真ん中に位置していて、太平洋と大西洋の両方に面している。
そのどちらかで、魚種がぜんぜん違ってきます。太平洋側は、外洋性のキハダマグロやカジキの仲間など。
大西洋側は、ジャングル性の海岸が続く海外線で、マングローブなどの周辺に生息する
様々な魚がいます。その代表がターポン。
わかりやすく言えば、セイルフィッシュの海とターポンの海なんですね。
どちら側に行くかで、違った釣りが楽しめるわけです。
K.
それも、また面白い!
Mさん.
89年は、太平洋側。バヒァペズヴィエラという名前のロッジに行きました。
バヒァはベイ( 湾 )、ペズヴィエラはセイルフィッシュのこと。
つまり、セイルフィッシュの湾という名前のついた有名なロッジ。
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* 1989年 コスタリカのロッジ、バヒァペズヴィエラの風景。
まだ、フライはやっていなくて、この時もエサ釣りでトライしました。
セイルフィッシュの他には底釣りでレッドスナッパーやオキサワラとかも。
これは、ルースターフィッシュという中南米特有のアジ科の魚で。ルースターって雄鶏って意味ですけど。
背びれが雄鶏のたてがみのような形なのが特徴で非常にきれいな魚です。岩場の周辺などにいますね。
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* ルースターフィッシュ
K.
コスタリカは、相当な回数行かれているようですが、その他はどんな国に行かれたのでしょう?
Mさん.
そうですね。メキシコやベネズエラ、そして、グアテマラへも。コスタリカは、20回くらい行っていますね。
K.
へぇ~ 20回とは、すごいですね~ 釣り方とかは、どのように変化してきたのでしょう?
Mさん.
始めの頃は、ライトタックルのトローリングとかの釣りが多かったのですが、
だんだんとフライでということになってきまして。
そう、フライでセイルフィッシュを釣るのがメインになっていきました。
コスタリカやグアテマラのセイルフィッシュ。
オーストラリアではセイルフィッシュ、ブラックマーリン、マカジキをフライで釣ってきました。
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* 2003年 セイルフィッシュ、コスタリカにて。
ただ、最終的にすごく悲しいことがあって。だんだん減ってっちゃうんですよ。
K.
魚が?ですか?
Mさん.
はい。セイルフィッシュはそんなにおいしくないので
それだけを漁獲するのではないのですが、世界的に魚の需要が増大して。
様々な漁が盛んに行われるようになってきたんですね。
一つはシイラですね。マーケットバリューがあるので彼等はこれをはえ縄漁で獲るんですよ。
小魚をエサに。同じ食性なのでカジキもかかってしまう。
もう一つはツナボートっていって、キハダマグロなどを獲る巻き網漁がある。ものすごく増えまして。
私が行き始めた頃はセイルフィッシュなどは本当にたくさんいたんですけどね。
一日20~30本は上がってきたんですよ。それがだんだんと減ってきて、それは悲しいことですね。
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* 2003年 コスタリカのクロコダイル・ベイ・ロッジにて。
K.
乱獲や混獲は、漁業の世界的な問題ですよね。
Mさん.
そうですね。
で、セイルフィッシュが少なくなってきたコスタリカの後は、
10年程前頃から、グアテマラが脚光浴びて釣りに行っていました。
最後にグアテマラに行ったのは3年前くらいだったのですが、そこで大きなツナボートを見かけまして。
今でも釣れるとは思うのですけど。それで、やんなっちゃいました。
K.
何か、がっくりする気持ちわかります。
で、フライでセイルフィッシュから、最近はターポンへ移行していったという?
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* ターポンは、ゲームフィッシュとして面白いとともに、その美しさも魅力だそうです。写真は、2013年コスタリカにて。
Mさん.
はい。今までの海外の釣り歴の前半は、カジキ系統のフライが多かったんですね。
セイルフィッシュがメインで、ブラックマーリン、マカジキなど。
あ、そうそう。憧れの魚の一つに、ブルーマーリン( クロカジキ )があるんですが、
でっかいやつは300lbくらいある。恐怖すら覚える話です。
3mくらいの丸太棒みたいのが追っかけてきて、フライに一発で食いついてくると、
それは瞬間でぶっ飛びますからね。
K.
聞いているだけで、怖いです( 笑 )。
Mさん.
ブルーマーリンは5回くらい掛けていますが、獲れたのは1本だけ。
150lbくらいのやつかな。20lbリーダーで、かろうじてリーダータッチといって
リーダーに触れればクルー達は獲れたと認めてくれるのですが。
その瞬間に切れましたけど。すさまじい迫力ですよね。
そんな具合で、とても釣りの対象としてカジキ類は面白いのですが。
段々と減ってきちゃって、今度はターポンをやるようになりまして。
ターポンは食べてもおいしくなくて、商業価値がないのでたくさん残っているんですね。
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* 2013年 ターポンとのファイト、コスタリカにて。
K.
あ~、そういうことなんですね。
Mさん.
ある意味、ゲームフィッシングのための魚みたいなもので。
コスタリカのカリブ海、大西洋側は先程お話ししたように、ターポンの海ですね。
特殊な魚で、外見はニシンの化け物のようなかっこしていまして。
また、発生としては非常に古い魚なんですね。
K.
はい、よく言いますよね。生きた化石のような魚だって。
Mさん.
そうですね。面白いことにハイギョのように、浮き袋を肺に準ずるように
使うので、ある程度空気呼吸ができるようなんですね。
とにかく、筋力含めていろいろと理由はあると思うのですが、めちゃくちゃタフなんですよ。
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* 2013年 ターポンを釣り上げる。コスタリカにて。
いるところは、マングローブの浅瀬から、せいぜい深くて水深30mくらいのところ。
とにかくタフ、よく跳ねて。大騒ぎする魚です。そして、でかい!
でかいと170~180lbありますし。
K.
ターポンフィッシングの象徴的なシーンなんでしょうね。
ばかでかい魚体が海面から縦にジャンプする写真はよく見ますから。
Mさん.
そうですね。
そんなターポンを求めて、最近通っているところですが、コスタリカの大西洋側にコロラドリバー
という川がありまして、そこの河口がベースになっています。
私の知るところでは、世界一のターポンの釣り場だと思います。
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* 最近、通われているという、コスタリカのシルバー・キング・ロッジの風景。